四国遍路170万歩の旅

−定年遍路道中記−







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4月6日(火) 17日目 「くじらが見えた?」  晴 

7:00宿出発…ホテル海坊主11:30…浮鞭・入野の浜13:40
…大方町・リゾートイン入野西洋館15:00着  <25.9キロ 33,989歩>

ホテル海坊主
大方町・リゾートイン入野西洋館
 身も荷も軽く、善意もたくさんいただき心も軽くなってきた。今日は距離も短く天気も良し、のんびり旅を楽しもう。
 四国は、内陸部は山と山が重なり合い、その山がすぐ海まで迫っていて、曲がりくねった海岸線は断崖絶壁が続いていた。その山と海のわずかな空間を切り開いて道路と鉄道が走っている。
 
道路崩壊
伊与喜駅の先から旧道に入り熊井部落に向かった。明治38年開通の熊井随道の入り口に「町道崩壊通行止め」の看板が出ていた。ここまで歩いて来ていまさら国道に戻る気はなく、恐る恐るトンネルに入ったが、トンネルを出たところの舗装道路が崩れ、かろうじて山側の50cmが通れるだけだった。再び海岸線に出てしばらく行くと井の岬に出た。その岬をまわり有井川の駅を過ぎると足摺岬がはるか遠くにかすんで見えた。

 青い空・青い海・何処までも続く白い砂浜、萌黄色に染まった山々、桜が咲き、野辺には菜の花やチューリップが咲き乱れ、うぐいすが鳴きとびが舞う。
 誰からも束縛されず、時間も気にせず、今は歩くことしか考えず自分の足だけを頼りに歩く。石碑やめずらしいものがあれば立ち止まり、すばらしい景色があればいつまでも眺め、土地の人の話しを楽しみながらただひたすら歩く。
 歩いているからこその速度と目線が教えてくれるものがたくさんあった。心の底から楽しくなってきて、思わず「極楽! 極楽!」と叫びながら歩いていた。
 時間と健康とわずかなお金、この3つが揃わなければこんな贅沢な旅は絶対に味わえまい。

ホテル海坊主
大方町・リゾートイン入野西洋館
 ホテル海坊主のレストランでかつおたたき定食を食べ、大方町に入ると、「ホエールウオッチング入野港」の大きな看板が建っていた。この大方町の沖合はニタリくじらの泳ぐ姿が良く見られるそうで、「午後だったら見えるかもしれねー」と冗談交じりで海を見ていたおじさんが言った。
 浮津海岸は広い砂浜で夏ならば海水浴でにぎわうだろうが今はまだ4月、人ひとり見えなかった。おじさんの冗談を間に受けたつもりはないが、靴を脱いで砂浜に足を投げ出し、ただボーッと海を見ていた。

 
あしずり遍路道
後ろから若い男が「あれがあしずり岬ですか?」と声をかけてきた。最近の新聞で自閉症や引きこもりの若者が集団で四国遍路をしている記事を読んだが、この若者はその集団を引率しているひとりだった。
 今回は15人で今夜は大方町の体育館に泊まり、食事は地元のお接待に預かると言った。荷物は伴走車に積みこみ、1日の歩行は20キロだが色々な人がいて…話を聞くと大変なようだった。

入野の浜
 波打ち際で2歳ぐらいの女の子が2人、お母さん達と来て砂遊びをはじめた。海の水も温かく砂浜は熱くなく裸足がちょうど気持ちいい。邪気もたくさん背負った髯をはやした白衣のおじさんも、こども達の仲間に入れてもらい童心にかえって無邪気に遊んた。人はいくつになっても子どものようにはしゃぎたい気持ちを持っている。楽しかった。

 入野西洋館は洒落た造りのかわいいリゾートホテルだった。私の他に夫婦のお遍路が1組泊まっていた。
 今晩の夕食…ではないディナーはフィレステーキ、肉とパンは本当に久し振りだ。確か肉を食べたのは初日のハンバーガーと山本旅館のチキンカツぐらいか。やせたのは歩くだけでなく肉を食べないことも大きいのかも知れない。この頃は夜中にトイレに行くようになり、洋室なのにバスだけでトイレが外なのにはまいった。
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