以前からアニタさんに、リクシャーには乗合があるとは聞いていた。だが実際には乗ったことがなかった。ある土曜日、私の住んでいる隣の駅、カンディバリ駅で電車を降りて、カンディバリのマーケット(駅からリクシャーで20分くらいのタクール・ビレッジ)に行こうとリクシャーに乗った。ところが両脇から男性と女性が乗ってきた。これは困ったことになった。どうも乗合リクシャーに乗ってしまったようである。すぐに「タクール・ビレッジ?タクール・ビレッジ?」と連呼した。二人とも、うんうんと頷いてくれた。まず安心だ。リクシャーが走りだした。途中、10分くらいして駅でもないところで女性が降りた。お金を払っている。いくらなのかよく見えなかった。困ったことに自分は20ルピーなどという少額紙幣は持っていない。駅の近くで男性と私は降りることになった。「ハウ・マッチ」と言って50リピー紙幣を出した。すると運転手、男性に「10ルピー」と言ってお金を請求した。男性は10ルピー紙幣を渡した。運転手は私の方を見ると、手を振る。いらない、と言う意味である。男性はいぶかしげな顔をしたがそのまま立ち去った。どうもこの男性は私の分も含めて二人分払わされたようだ。しかしこちらが外国人で言葉が通じない、とあきらめたようだ。運転手は何事もなかったかのように車を走らせて行ってしまった。翌朝、アニタさんにその話をした。「先生、本当に何でもやるんですね。インド人でタダでリクシャーに乗った人は聞いたことがありません。それに言葉もわからずによく怖くなかったですね」と逆に驚かれてしまった。 |