高島克規のインド日記
10月6日(火) プリンス・オブ・ウェールズ博物館
  まだ、ご紹介していなかったムンバイの名所がある。チャトラパティ・シヴァージ・ヴァストゥ サングラハラヤ(プリンス・オブ・ウェールズ博物館)だ。インド門を北西に500メートルほど進むと、広大な庭園が見えてくる。
地図(写真をクリックすると拡大出来ます) 博物館庭園(写真をクリックするとスライドショウ)

博物館入り口と概観
(写真をクリックするとスライドショウ)
  そこにそびえる重厚な建物が、1905年のイギリス皇太子(ジョージ5世)が訪印を記念して造られたプリンス・オブ・ウェールズ博物館である。
1923年にオープンしたこの建物はインド・サラセン様式(注)に15-16世紀の西インド様式のドームを取り入れた、ジョージ・ウィテットの設計によるもので、白亜のドームが重厚な印象を与えている。2月に家内が来た時も、5月に友人ご夫妻が来た時も案内できなかったので一人で出かけて行った。
  ある日曜日の朝、電車でチャーチ・ゲート駅まで行き、そこから博物館まで30分ほど歩いた。10時(開館は10時15分)に博物館に到着したがもうすでに団体客が長蛇の列で並んでいた。

  入場料金はいつものことであるが「インド人用」と「外国人用」の2本立てで設定されていた。インド人(12歳以上)15ルピー、外国人300ルピー(1ルピー=約2円)と、20倍。先進国の博物館、美術館の入場料が600円というのは、妥当か安め、という水準だと思うが、インドでは一日1USドル以下で暮らしている人々がまだまだ多いのに、現地の人に300ルピーでは高すぎる。従って15ルピー、それはわかる気がするが、外国人に対してあまりにも格差がありすぎていつも納得がいかない。更にカメラの持ち込みにも料金がかかる。フラッシュ使用不可で、200ルピーである。フラッシュ使用不可で200ルピー、何とも納得がいかなかったが、何とかゴマ化して撮影しようと思っていた。
博物館入口
入場券(写真をクリックすると拡大出来ます)
  カメラにタッグを取り付けてもらう。入場するのに500ルピー(=300+200)(約1000円)である。異常な値段である。私のランチ代は一日25ルピーなので20日分である。
  入場の為のセキュリティーチェックがご丁寧にちゃんとしていて、バッグの中のチェック、ペットボトルの持ち込み不可、X線検査、と空港並み?と思う程。結局、面倒くさいのでカメラだけ持ち込むことにした。入口ではカメラ・タッグの確認が厳しくされる。
  やっとのことで中に入ると300ルピーの価値はあった!と納得の展示物が陳列されている。ただし、むっとするような蒸し暑さだ。それもそのはず。この博物館はエアコンなし。天井のファンが回るのみなのだ。モンスーンの時期(6〜9月頃)に訪れるにはそれなりの覚悟が必要である。
  こっそり係員に見えないように石像を撮影した。ところが私のカメラは自動的にフラッシュがたかれてしまうので、すぐに係員が飛んできた。
入場料金案内(写真をクリックすると拡大出来ます)    ↑カメラタグ(写真をクリックすると拡大出来ます)

博物館1階入口内部
  フラッシュをたいてはいけないことは知っていたがカメラ・タグを見せて「カメラ・タグがあるからOKだよね?」とわざと言ってみた。「ダメだ、それはカメラの持ち込みだけを認めているものでフラッシュは禁止だ」と強く注意されてしまった。やむなくその場所では撮影はやめることにした。
展示品(写真をクリックするとスライドショウ)

  博物館内部には、美術、自然史、考古学部門のそれぞれのセクションにおびただしい数の展示品が並べられている。特に見どころとされているのが、2階部分に位置している細密画のコレクションである。宮廷生活や神話の世界を細筆で描かれた繊細さと崇高さには息を飲むほどすばらしい。特にイスラムの細密画は数も多く、そのすばらしさは折り紙付きである。ここでも係員にこっそり撮影したが、やはりフラッシュがたかれて係員に注意されてしまった。従って、この博物館での写真はごく数枚で皆さんにお見せできないのが残念である。   驚いたことに日本というコーナーが小さなスペースで設けられていたことである。そこには印籠、浮世絵などが陳列されていたのである。妙に嬉しくなってしまった。
ムンバイに本拠地のある財閥TATA(タタ)の総帥、ラタン・タタ氏のコレクションもここにかなり納められていた。
  全く撮影が出来なかったので文章による説明だけであるが大半が絵画である。この部屋は特に蒸し暑く、空気の流通もなくカビ臭くていたたまれなかった。さらに考古学部門にあるエレファンタ島出土のシヴァ神の胸像、ヴィシュヌ神像、南インドのアマラーヴァティーから運ばれた仏塔の一部、ガンダーラ美術の仏像、仏陀の生涯をモチーフにした石刻レリーフなども必見である。やっと見物が終わり出口である。
日本関係展示品(写真をクリックすると拡大出来ます)
  出口から外に出る廊下にも美術品が並べてある。ここでは思う存分に写真撮影をすることができた。きっと中に陳列されている美術品とは価値に雲泥の差があるのであろう。野ざらし、と言っていいほどの並べ方である。庭を通過して入口に戻るのであるが庭の植物が綺麗で目を奪われた。入場料、写真撮影には不満が残ったがムンバイに来られたら一度足を運んでいただきたい場所の一つであることは間違いない。
外廊下 野ざらし状態の石像
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