高島克規のインド日記
7月31日(土) インドのテレビ
  以前、インドの新聞についてご紹介したので今回はテレビ放送<注1>をご紹介したい。個人的にはケーブルテレビ(Dish TVという)を有料でひいているので、およそ100チャンネル<注2>くらいを見ることができる(Sony Entertainmentチャンネルなんてのもある)。
  NHKも放送されている。ただし、全て英語で、内容も国外用に作成されていて日本人の趣味にはあわないかもしれない。
  「クローズアップ現代」も日本から2週間遅れくらいで放送されている。キャスターの国谷裕子さんも英語の吹き替えとなるので別人のように映る。




←NHKチャンネル
Sony Entertainmentチャンネル TV番組表(写真をクリックすると拡大できます)

  毎月行われるインド国内テレビ・ラジオ視聴率調査の結果(2009年2月)によると、最高視聴率は「クリケット」の生中継放送時間帯であった。トップ10視聴率番組<注3>の、1位、6位、7位、8位、9位ともクリケット試合の中継時間帯だった。インドは映画マニア国と呼ばれる同様、スポーツではクリケット・マニア国である。クリケットの次ぎに人気なのが家庭向けのファミリードラマがメインで、その後はこの3-4年間圧倒的な人気上昇一方のリアリティ番組シリーズである。

  インドは多言語国でもあり、国語のヒンディ語(映画・テレビ番組が最も多い)の視聴率が全体視聴中の最も多い26.4%で、ほか言語で22.4%の視聴を占める。また、ヒンディ語映画(ボリウッドとも呼ばれる)専門チャンネルがとても人気で、テレビの全体的な視聴内の11%も占める。

  それ以外のジャンルではキッズ向け番組、各専門チャンネル、ヒンディ語ニュース番組、ヒンディ語映画以外言語の映画放送、 スポーツ、ほか言語ニュース、音楽系番組、地方向け音楽系番組、InfoTainment(情報+娯楽番組)、洋画、宗教関連、英語ニュース、ビジネス専門ニュースと英語総合エンタテイメント番組となっている。ちなみに、インドはニュース専門チャンネルが多く、実は現在世界最高のニュース専門チャンネル数国になっている。
ニュース(写真をクリックすると拡大スライドショウ)
  以下は主要な番組についての個人的感想である。

<クリケット>
  インドでは、クリケットの選手はスーパースターだ。クリケットを楽しんだことのないインドの男の子はいないと言ってもいい。イギリスの国技であるクリケットは、帝国主義の時代にイギリスが世界に広げたことに伴って、イギリスを旧宗主国とする国々や、英国連邦諸国で広まった。とくに熱狂的なインドでは、ライバルであるパキスタン戦の中継番組の視聴率は80%を超えるといわれている。ちなみに、クリケットはサッカーについで世界第2位の競技人口を誇るスポーツであるという理由は、インドの貢献による。

  2008年、初のプロリーグがクリケットのインディアン・プレミア・リーグ(IPL)だ。同年4月18日から、国内主要都市を本拠地とする8チームが熱戦を繰り広げている。10億ドル以上のテレビ放映権料に加え、大手不動産開発会社DLFやヒーロー・ホンダ、ペプシなど協賛企業も計4000 万ドル規模のスポンサー料を払うというビッグ・ビジネスである。スポーツをテレビ観戦するという文化がインドに定着するかどうか、放送・家電などの業界もクリケット人気の拡大に熱い期待を寄せている。
クリケット(写真をクリックすると拡大スライドショウ)

<ドラマ・映画>
  インド ドラマ・映画の特徴は、すべてが「ミュージカル」仕立てであることだ。ドラマ・映画番組を見ると必ず歌っている、踊っている、なのである。コマーシャル放送も同じで商品とともに、あるいは背景には踊りあり、歌ありである。初めて見た人がまず驚くのは、1つの映画の中に6、7曲のソング&ダンスシーンが挿入されていることである。歌手でもないヒーロー、ヒロインが歌い出し、おまけにその歌に振りを付けて踊りまで踊ってしまうというインド映画に、慣れない人は度肝を抜かれる。TVドラマも、とにかく歌って踊る。男女が出会って歌い、敵との対決で踊り、ハッピーエンドでまた歌って踊って、とにかく賑やかである。
  ドラマ・映画の中で目玉となるこれらのシーンには資金がふんだんに投入され、ワンコーラスごとの衣裳替えは今や当たり前、大規模なセットを組んだり、野外撮影にクレーンを使用したり、時には100人以上のバックダンサーを配したりと、他国のテレビ・映画界ではとても真似できそうにない贅沢なシーンが展開する。何回見ても日本人の趣味には合わないような気がするが、これは趣味の問題なので一概には言えないかもしれないが・・・
ドラマ・映画(写真をクリックするとスライドショウ)

<神様のドラマ>
  例えば、6時から、ガンガーの神様(ガンジス川を女神ガンガーとしてまつった)の番組、7時から、シルディ・サイ・ババ<注4>の番組、8時から、マハーバーラタ<注5>の番組という具合に同じチャンネルで、神様のドラマが次から次へと放映される。まるで、日本の時代劇の、「水戸黄門」、「遠山の金さん」が長寿番組として放映されているように、インドでは、武士道の代わりに、神話が目白押し。時代劇のように、善悪の役柄が明らかで、善は人間の本質!いつも善が勝つことが、特徴だ。ひょっとすると日本の勧善懲悪の番組のルーツはインド?なんて思ってしまう。
神様番組(写真をクリックすると拡大できます)

<アニメ番組>
  日本のアニメがたくさん放送されている。「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」「ドラゴンボール」「忍者ハットリ」「ちびまるこちゃん」などなどである。
  特に、「クレヨンしんちゃん」は高い視聴率を誇る(2008年初頭には視聴率は50〜60%、土曜日にはなんと4−6時間も再放送をしていた)。言うまでもなく、放送はインド国内の言語に吹き替えたものだが、吹き替えのクオリティが高く、日本語版と笑えるところもほぼ変わらない。
  ただ、ヒテーシュさんの話だと「インド用にすこし表現を変えている」とのことだが、それにしてもすごい人気だ。
アニメ番組(写真をクリックするとスライドショウ)
最後にちょっと変わったニュースを

 パ軍、元やり投げのインド人2投手と契約

 パイレーツは2008年11月24日、インド出身のリンク・シン、ディネシュ・パテル両投手とのマイナー契約を発表した。球団によると、大リーグ球団がインド人選手を獲得するのは初めて。

 両投手は野球選手の才能発掘を目的としたインドのテレビ番組「100万ドルの腕」に応募した約3万人の中から選ばれた。大リーグで数々の名投手を育てた南加大のハウス投手コーチの下で約半年間トレーニングを続け、12日にアリゾナ州でトライアウトに臨んだ。

 球団ホームページによると、シンは19歳の左腕で、球速は最速145キロ前後。右腕のパテルは20歳で、最速150キロ近いという。ともに高校時代はやり投げの選手だった。

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