高島克規のインド日記
7月20日(月) 最近の話題
(1) オフィス賃貸料
   いままでにもムンバイの住宅、借家料は高い、と何回か書いてきたが日本にいる方にはピンとこないかもしれない。6月5日に、ムンバイのオフィス賃貸料がどれほど高いか「Time of India」誌に掲載されたのでご紹介したい。

順位 場 所 スクエア当たりの賃貸料(年間)
  東京(都内)   183.62ドル
  ロンドン(ウェスト・エンド)   172.62
  モスクワ   170.24
  香港   150.42
  東京(都下)   149.58
  ムンバイ(前年は5位)   131.04
  ドバイ   122.52
  パリ   114.89
  ロンドン(シティー)   103.50
10   ダブリン    93.56
<参考>デリーは12位にランクされている。

  ムンバイのオフィス賃貸料がいかに高いか、は上記でおわかりのとおりであるが、その中でも特別高いのがナリマン・ポイント(地図ご参照、正に文字通り岬の突端のことである)と言われるユダヤ人住居地区である。
  ナリマン・ポイント<注1>にはテロで襲撃された「オベロイ・ホテル」があり、その隣にはタージが所有するオフィスビルが並んでいる。

  先日、友人が遊びに来たときにこの地域を散策したが、運転手の話ではタージが所有するオフィスビルのワンフロアの値段は5億ルピー(約10億円)ぐらいするそうである。そのナリマン・ポイントの先端でスラム家族が火を焚いて食事をしていた。写真はさすがに撮る勇気はなかった。
ナリマン・ポイント(写真をクリックすると拡大できます)

タタビル(手前)とオベロイ・ホテル ナリマン・ポイント(写真をクリックするとスライドショウ)

 ナリマン・ポイントのある海には沢山の漁船が出て漁をしている。
 そのスラム漁村の合間を縫ってテロリストは襲撃してきたようである。あくまで私見であるが、ひょっとするとそのスラム漁村の一部がテロリストの手助けをしたのかもしれない。
 一見すると平和そうに見える海であるが、この海には貧富という格差が浮かんでいるように見える。
スラム漁村

(2) 車の販売状況
会社名 2009年5月 2008年5月 伸び率(%)
  Maruti Suzuki 70,785 64,143 +10.4
  Hyundai 23,503 24,510 -4.0
  Tata Motors 15,388 19,234 -20.0
  Mahindra 12,620 13,048 -3.2
  Hero Honda 382,678 312,317 +22.5
  TVS 118,574 112,770 +5.0

  上記が5月の車の販売実績であるが、日本のメーカーの健闘が目立つ。インド自動車工業会(SIAM)によると2007年度(2007年4月〜2008年3月)のインドにおける乗用車販売台数は約155万台となり2002年から5年間で自動車需要が約2倍に拡大した。
  今後のインド経済の成長、11億人という人口、2輪車からの乗り換えなどを考えると、今後もインドの自動車市場は成長が続くと思われる。(写真:車TATA@A、Suzuki・Honda、Hyundai)
インドで圧倒的シェアを誇るのはマルチとスズキの合弁会社、マルチウドヨグ、このメーカーだけで5割を超える。まさに2台に1台はマルチ車。それについでインドの国産自動車メーカーのタタ、そして韓国メーカーのヒュンダイ(現代)がそれぞれ3割、2割を占める状況だ。


←左の写真をクリックするとスライドショウ

  タタ車のネーミングは"indigo" "indica"などインド風でデザインも可愛い。マルチスズキには"zen"(禅)という車もある。これは日本でいうスズキのセルボである。
  最近の日本車メーカーの動きを<注2>にまとめてみたのでご参照願いたい。

  意外と見過ごされているのが高級車への動きである。車で走っていると高級車が多数走っているが目につく。この市場は着実に成長しているのだが、あまり知られていない。 インド自動車工業会(SIAM)によると2007年4月から11月のインドにおける高級車の販売台数は4922台で前年比26%増と好調な伸びを示している。
  また、メルセデスべンツインディアの2008年度第1四半期の販売台数は1,094台で2007年比で59%伸びた。ちなみにメルセデスべンツインディアは2007年度2,491台を販売している。着実に伸びている高級車市場でタタは「ジャガー」と「ランド・ローバー」を販促していくことで、インドにおける高級ブランドを定着させ、価格のみならずブランド力についても差別化を図っている。

  ここ半年で急速にインドは変わった。そんな風に感じる。10万円台のタタ「ナノ」車を日本人は笑っているが、笑っていられるのもそんなに長い時間ではない。そんな気がする。
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