高島靖男のインド日記
月3日(水) ゴアへの旅(1)
   5月下旬に家内と友人夫妻がインドに遊びに来てくれた。日本では知られていないインドの楽園ゴア<注1>へ旅したのでその模様を数回に分けて紹介したい。インドに来るまでゴアという名前を知らなかった。生徒たちに「先生、ゴアは素晴らしいから是非行ってください」と勧められていた場所である。
赤い部分がゴア
上の写真の赤い部分がゴア ゴアの地図(左の写真の赤い部分)

  5月25日(月)昼12時のJet Airwaysでゴアに向かった。1時間の旅である。日本でチケットを購入したこともあるが、往復で一人4万円強の値段である(参考:デリーの往復2万円)。決して安くない、が、ゴアには金持ちのインド人あるいは欧米人しか行かないのでこの値段でもお客が減ることはないのであろう。
  インドの飛行機会社だからと馬鹿にしてはいけない。機内もきれいだし、サービスも十分だし、1時間の飛行時間にもかかわらず、ちゃんと昼食もついてくる。
  ただし、私には満足な食事であったが、日本から来た3人には合わない食事であったかもしれない。しかし、それにも増して印象的であったのは空港の手荷物検査札が「Allianz<注2>のコマーシャルであったことである。流石と言わざるを得ない。インドでは「BAJAJ Allianz」という名前で営業している。
機内食 アリアンツのタグ

 1時10分にゴアに到着した。上空から見ると赤茶けた大地が広がっている。ゴアの説明は<注1>をご参照願いたい。インドはイギリス文化が浸透しているがここはポルトガル文化の地である。半年ばかりインドに生活したこともあって私には全くの異国に来たという感じがした。

 我々の宿泊先は「フォート・アグアダ・ビーチ・リゾート<注3>」というところだ。ガイドブックによると、空港でプリペイド・タクシーがあるらしい。うろうろしていると、「タクシー?」と声をかける男がいる。「そうだ」と答えると「プリペイド・タクシー」と表示があるところに連れていかれた。受付は女性だ。「いくらだ」と聞くと「エアコンあり1300ルピー(2600円)、エアコンなし900ルピー(1800円)」と言う。この暑さではエアコンなしでは無理だ。「エアコンあり」と答えて1300ルピー払った。「車は?」と聞くと「ついて来い」という男の合図で四人はぞろぞろとあとから付いて行った。
宿泊ホテル上空から

 突然、若者が出てきてバトンタッチである。大丈夫?と一瞬思ったが、「シンケリム?」と聞かれ考える余裕もなかった。「シンケリム?」。何のことかサッパリ。「フォート・アグアダ・ビーチ・リゾート」と言うと、「シンケリムだ。シンケリムは場所の名前で、フォート・アグアダ・ビーチ・リゾートはホテルの名前だ」と説明してくれた。英語が上手い。それにインド訛もない綺麗な発音だ。南に行けば行くほど英語が通じる、まさにそのとおりのようである。

 しばらく待っているとその若者が運転する小さな車がやって来て、「乗れ」という合図をする。荷物を載せて出発である。友人には申し訳なかったが体格がいいので前部席に座ってもらった。「プリペイド・タクシー」の女性によると1時間半の距離とのことである。かなり遠い。
 走り出した。最初は気持ちよくという言葉があてはまる、と思っていたが、次第にスピードが上がり出すとビュンビュンという言葉がピッタリ。次から次へと車を追い抜いていく。対向車など「へのカッパ」である。途中まで四人で冗談など言っていたが途中からは声が出なくなった。しかもメインロードを外れ、抜け道を走り出したようである。我々、四人の送迎に往復3時間もかけていては次の飛行機の客を逃してしまう、とでも言いたげなスピードである。

  やっとホテルに到着したようである。突然鉄のゲートが現れた。厳しいチェックである。簡単に中に入れない警備体制である。ゲートを通過してしばらく行くとやっとホテルの玄関に辿り着く。ここでも厳重に荷物チェック、身体検査である。いやはやインドのどこに行っても厳しくなったものである。
  ホテルのロビーに通された。息を飲む!まさにそのような表現がピッタリである。素晴らしい景色である。「フォート・アグアダ」(アグアダ砦)が目の前に広がり、アラビア海が一望できるのである。ここはインドではない。ハワイかタヒチか、世界有数のリゾート地そのものである。
ホテル(写真をクリックするとスライドショウ)

<注3>フォート・アグアダ・ビーチ・リゾート
ホテル名に冠された「フォート・アグアダ」(アグアダ砦)というのは植民地時代の歴史的建造物で、海岸の突端にせり出したレンガ製の要塞。インドの観光資本、タージ・グループがそのロケーションをとり込んで高級リゾートホテルを経営している。

 部屋に通された。これまた素晴らしい。このときになって初めてここが「タージ・グループ」の経営だと気がついた。朝食が付いて一部屋130ドル(ガーデン・ビュー)である。とても日本では考えられる値段ではない。
 通常、私の感覚ではインドの貨幣価値は日本の7分の1くらいである。単純に計算すると900ドルくらい、ということになる。それは大げさとしても500ドルぐらいの価値はあるホテルである。
室内(写真をクリックするとスライドショウ)

   早速、水着に着替えプールへ直行である。プールの横にはゲートがあって海に出ることが出来る。アラビア海へ行ってみた。波は荒いが、海水は冷たくない。とても塩からい。友人曰く「日本の海より塩からいよ」。まさにその通りである。「フォート・アグアダ」(アグアダ砦)へも行ってみた(写真ご参照)。500年も前にポルトガル人がこんなところに要塞を築いていたのかと思うと感慨ひとしおである。1549年にフランシスコ・ザビエルがこのゴアから日本にやって来たのである(詳細は次回にご紹介)が、この時まで全く知らなかった。
アグアダ砦

 プールに戻るとインド人の家族が入っている。相当の金持ちなのだろう。欧州人の姿も沢山見える。インドではなく別の世界へ来た錯覚に陥る。こんなところにいると世の中を全て忘れてしまいそうである。プールサイドのトイレに用たしに行った。
 何気なく便器を見た。「TOTO」と印刷されているではないか。以前、私の日記に感想を送っていただいた大先輩から「インドに東陶が進出している」と言うお話を伺ったことがあったが、ムンバイでなくゴアの「タージ・ホテル」系列のホテルで見るとは。感激である。東陶の営業の方には頭が下がる思いであった。
TOTOの便器

(次回に続く)
目次に戻る