高島靖男のインド日記
10月27日(月) ディワイリ祭
 今日は、ディワリ前の最後の出社日だ。前日、ヒテーシュさんに正装を借りてすっかりインド人になった。ヒテーシュさんもアニタさんも正装だ。明日、と明後日はユニカイハツの祝日のため今日は休みを取っているものも沢山いると聞いていた。皆正装で来る、とアニタさんは言っていた。

ディワイリ祭
 通常どおり日本語の授業は行ったが、皆そわそわしていて身が入っていない。日本でも12月31日に授業などやっても誰も出席者はいないであろう。だが、ここは民間企業だ。給料をもらって授業を受けているので皆しぶしぶ出ているのであろう。私もあまり真面目にやる気はなくデジカメを持っていったので、授業の始めに個人個人写真を撮った。デジカメがこれほど人気があるとは知らなかった。デジカメはやはり高値の花でインド人庶民で持っている人はほとんで見かけない。ヒテーシュさん一家も持っていない。写真を撮っていると、教室が透けて見えるせいでもあるが、他の職員も写真を撮ってくれと押し寄せて来た。もう、授業どころではなくなった。Dipalさんが飛んできて、「4時から儀式をやるので、その時全員の写真を撮って欲しい」と言われてしまった。それはそうである。授業も業務もそっちのけ!なのであるから。

 午後になるとサポートグループの人たちが儀式の準備を始めた。小皿に絵の具を溶かして、指で金庫にヒンディー語で何やら書いている。私には呪の言葉でも書いているかのように鮮血色で不気味に見えた。書かれている文字の意味は「グッド・ラック」ということだそうだ。以前、ヒテーシュさんからディワリはお金の神様と説明を受けた。「新年を迎えると帳簿を新しくするのです」、とのこと。正に金庫に文字を書いているのはそのようなことなのであろう。昨日も駅前に行ったら、赤い(ヒンズー教では縁起のいい色とのこと)包装紙に包まれた会計簿が山積みになって売られていた。入口など神様が来るところにはいたるところに文字が書かれた。
ディワイリの日
 4時になるとロウソクに火を灯し、御線香に火をつけ儀式が始まった。金庫の前で儀式が行われた。ヒンディー語で祈りを捧げ、と同時に歌を歌う。さっぱりわからないが口をパクパクさせた。約10分くらいの儀式である。その祝詞を先導しているのが、まだ昨日入社したばかりの運転手である。どうなっているの?その後、見ていると線香の煙を顔、頭に一人一人がかけている。これは日本の新年にお寺などで行う行為と全く同じである。というより日本がこの行為を仏教を通じて輸入したと言った方が正しいのかもしれない。自分の前に線香とロウソクが回ってきた。皆と同じように線香の煙を顔、頭にかけた。サポートグループの人が額に赤い点を塗ってくれ、右手の腕に赤い糸を結んでくれた。ヒンズー教の儀式の一環なのであろう。

 しばらくすると、アニタさんが「先生、写真!」と言って外に連れ出された。おお、勢ぞろいして記念写真を撮るのを待っている。そんなに写真を撮るのがうれしいの??いつものことながら全員揃うのに時間がかかる。その間に結局6枚の全体写真を撮った。最初は私が撮っていたのであるが、「先生がいない!」ということになり、通りがかりのインド人の声をかけ、その人にも3枚写真を撮ってもらった。その後もスナップ写真を撮りまくった。部屋に入ると軽食が用意されていた。軽食はカレーの饅頭とお餅のようなお菓子、それにポテトチップスである。日本であればこんな時ビールとかアルコールが出されるが、ここはインド、しかもベジタリアンが社長である。何も出ない。歌も出ない。静かなものである。ちょっとあっけない。食べ終わると皆、それぞれに「Happy Diwali=新年おめでとう」と言って握手を交わし始めた。私もマネしてやることにした。ある人のところになったら相手が急に私を抱きしめるのだ!勿論、男性であるが。三回やらされた。回りの皆は大はしゃぎである。ハグ(抱きしめ)は儀式の一つで3回やると縁起がいい、とされているらしい。そのあとは全員とハグ
ディワイリの日の記念写真
を3回づつやることになってしまった。プロレスのようである。とても貴重な経験である。全員からメールアドレスをもらい、「今夜、写真を必ず送る」と約束した。中には「先生のメールアドレスも教えて」と言う人もいて、教えるとすぐ会社のメールボックスに沢山ディワリの祝いの言葉を送ってくれた。

 実家へ帰るものが多いのだろう。その後は皆急ぎ足で事務所を去っていった。帰途についた。町はお祭り気分で一杯だ。高速から見えるどの店も家もアパートもクリスマスの飾り付に似た飾り付けをしている。やはりキリスト教はヒンズー教とは深い関係がある、と改めて思った。私の住む家の周りでは豆電球でバルコニーや外壁にイルミネーションを施す家が多くみられる。中には「提燈」を飾っている家もある。クリスマスと中国の旧暦新年をミックスした感じと思ってもらえれば大体イメージがわかる。ここ一週間は夜11時までにぎやかに爆竹や花火などが、様々な場所でにぎやかに放たれている。11時をすぎるとピタリと修まる。ところが朝、6時になるとまた始まる。飽くことを知らないようだ。犬もおちおち眠っていられない。だから昼寝しているのか?あきれるほど、うるさく、にぎやかだ。爆竹は中国の爆竹と全く同じ代物。花火は隅田川の花火大会とはいかないがかなり大規模な打ち上げ花火も見える。大人も子供も楽しみにしているのであろう。ある意味無礼講の5日間なのである。自分にはさっぱり意味はわからないが貴重な経験をさせてもらって大変感謝している。明日の晩はヒテーシュさんのアパートの屋上から深夜から明け方まで花火大会を見ることとしている。さあ、皆が待っている。写真を送らなくては!
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