高島靖男のインド日記
ディワリ祭とは
 ディワリは、ヒンドゥー教の神様ヴィシュヌの化身である英雄ラーマが14年間追放されていた自分の王国アヨーディヤに無事帰還したことを祝って行われ、女神ラクシュミ(富と幸運の神で、ヴィシュヌの妻)を迎えるお祭りです。別名『光のお祭り』とも呼ばれ(もとのサンスクリット語「ディーパーワリー」は「灯明の列」の意味)、家々は「ディヤ」とよばれる小さな素焼きの皿のランプやろうそくの灯で飾られます。豆電球でバルコニーや外壁にイルミネーションを施す家もあります。また、爆竹や花火などが、様々な場所でにぎやかに放たれます。

 ディワリに向け、家々では家中すべての壁の塗り替え(ホワイト・ウォッシュ)をしたり、大掃除をしたりするそうです。新しい服を用意し、親しい人やお世話になった人、親戚の人や近所の人などにあげるプレゼントやお菓子を準備したりもします。(この時期、インドの人はとても『物入り』なのだそうです。ディワリがボーナスの時期に当たっているのも、このため??) プレゼントには、甘い物、ドライフルーツ、ナッツをはじめ、シルバーやゴールド、陶磁器などなど。

  ディワリの数日前から前日までに(各家庭による)、玄関先または門のところにディヤを置きます。「人が住んでいる家庭がここにありますよ」と女神ラクシュミにお知らせしてお迎えするためです。

 ディヤは、素焼きの皿の中にギー(ミルクから作った油)またはマスタード・オイルを入れ、コットンで芯を作り、灯をともして使います。ろうそくの灯は風ですぐ消えてしまいますが、ディヤについた灯はなかなか消えないそうです。

 そして迎えたディワリの日。新しい服で身を包み、 "HAPPY DIWALI !!" とお互いに声をかけあいます。家族でマンディール(お寺)にお祈りに出かける人もいれば、近くの人にプレゼントを配る人もいます。日が沈んでからがディワリ本番。家中の部屋ひとつひとつ、台所にもディヤやろうそくで灯りをともし、外やバルコニーにも灯りを置き、窓や戸も開け放ちます。富と幸運の神ラクシュミを我が家に迎え入れるためです。神棚の前に皆が集まり、プジャがおこなわれます。

 プジャでは、まずラクシュミの像の前に、お米(玄米)や麦、様々な種類のダル、野菜、果物、そしてお菓子などを、お線香を焚いてお供えします。 お坊さん又はお坊さんに代わる年長者がハバン(火を燃やして、火の中にギーを入れ、お供え物を少し入れる)をし、サンスクリットのマントラ(お経)を詠みます。その間皆は手を合わせています。その後、神様の像にロリと呼ばれる赤い粉でティカ(額に赤いしるしを付ける)をし、お水をあげて、お花を捧げます。そして、皆の額にも、お坊さんまたは年長者によってティカがほどこされます。 

 プジャのあとは、お供え物が「プラシャート」(お祈りのあとのおすそわけ?)としてその場にいる人みんなに分け与えられます。

 そして各々の家でプジャをおこなったのち、食事をし、お酒を飲み、カードゲームをしたり、花火をしたり爆竹を鳴らしたりして、一晩中もりあがるそうです。友人や親戚同士で集まることも多いとか。この日ばかりはギャンブルも暗黙の了解となっていて、けっこう大きな額がやりとりされることもあるとききました。お酒やギャンブル、また明かりが灯され窓や戸が開け放たれていることもあって、昔からディワリの夜は泥棒も多いそうです。

 ディワリの次の次の日が、Bhaiyaduji という儀式の日。Bhaiはヒンディー語で「兄弟」の意味です。ディワリは一般的に前後含めて5日間お祝いされますが、これがディワリのお祝い期間最後の日となります。この日は兄弟のところへ姉妹がやってきて、彼らの健康と長寿を祈り、『私を守ってね!』とお願いする日なのだそうです。兄弟の額にティカ(赤い粉「ロリ」と米粒とサフランを少々・・・)をつけ、甘いお菓子(最近ではインドのお菓子だけでなくチョコレートなど洋菓子で代用していることもある)を口に運び食べさせてあげます。兄弟は姉妹へ『よしわかった。守ってあげるよ!』と約束し(?)、お返しのプレゼントをします。
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