ドクター塚本 白衣を着ない医者のひとり言 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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では、毎日、テレビ・新聞などに洪水のように流される健康情報を専門家はどのように読んでいるのでしょうか。活躍中の若手がん疫学者、坪野吉孝・東北大学助教授が「食べ物とがん予防」(文春新書)のなかで披露している健康情報評価の思考プロセスをご紹介しましょう。 易学ではない、「疫学」という学問はようやくお馴染みになりつつありますが、日本疫学会・第一回学術総会開催は1991年のことでまだまだ若い学会(私も創設発起人会メンバーでした)なのです。実は坪野先生も立派な白衣を着ない医師です。嬉しいことに、ザ・セイホの時代に明治生命も資金・会場提供、講師派遣をして協力をした泊り込みの「疫学セミナー」で私の講義を聴いたことを覚えていてくださっていました。 先生は次のフローチャートで健康情報の信頼性を評価するよう勧めています。
「ステップ5」の研究デザインについて補足説明しますと、研究結果の信頼性がもっとも高いのはRCTで次いで高いのは前向きコホート研究で、例にあげた順序で信頼性は下がっていきます。一方、信頼性の高い研究ほど莫大な費用と人手、調査期間も長期にわたりますので、研究の信頼性と実施のしやすさとは相反することになります。ここで、私たちの生命保険被保険者集団の死亡率、入院率の研究などは、立派な前向きコホート研究であることを強調しておきます。もう一つ、わが国ではステップ5をクリアする研究が少なく疫学後進国と言われてきたことはいかにも残念でなりません。 さて、ココアどころか日本人に縁の深い緑茶と胃がんの関係を研究した坪野先生の結果を実例によって説明してみましょう。 動物実験の結果から緑茶に含まれるカテキンにがんの抑制効果があるとされてきたので、計画された研究で結果が注目されました。 宮城県内の40歳以上の男女、約2万6300人を対象に9年間追跡調査(前向きコホートです)し、一日に飲む緑茶の量で1杯未満から5杯以上の4グループに分けて胃がんの発生率を比較したが、グループ間の差がなかったというもの (米国のもっとも権威ある‘NEJM’という医学雑誌に発表)。 緑茶ががん予防に有効という「定説」に異を唱える結果ですが、「評価フローチャート」のステップ6以外はすべてクリアしていますので、信頼性は高いと言えますが、先生は慎重でこの研究ひとつで(ステップ6)結論が出るわけがないと論文上でコメントしています。 このほか、ベータ・カロチン、ヴィタミンEも「評価フローチャート」の1〜5ステップをクリアしているRCTの大規模調査では、意外にもその有効性が否定されました。イチョウ葉エキスも同様に有効ではありませんでした。 このように、厳密な評価に耐えうる信頼性の高い健康情報がいっぱいではないので、がっかりさせたかも知れません。 しかし、アンチョクでしかも信頼性の高い健康法があるくらいなら苦労はしないよ、とニヤニヤしておられる向きもあろうかと思います。日本人が簡単にココア党にならなくてよかったと思うのは私だけではないはずです。 最後に、坪野先生が発信しているがん疫学の最新情報のHPをご紹介しておきますので、さらに詳しく勉強したい向きはぜひリンクしてみてください。 |
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