平成21年12月25日
古今建物集 …美しい建物を訪ねて…(番外)

         歳末忙中回顧
         …『古今建物集』を振り返って

井出昭一
いつの間にか43回

 『柳緑花紅(改訂版)…My Museum 東京国立博物館…』のあとを受けて、2007年1月からスタートした『古今建物集…美しい建物を訪ねて…』は、いつの間にか3年を経過しました。最初のころは毎月2回のペースでしたが、息切れをして2008年5月からは月1回で連載を続け、11月までで43回を重ねることになりました。
 当初は、取り上げる建物が種切れになって、すぐにでも終わってしまうのではないかという不安がありました。正直なところ自分でも、これ程続くとは思っていませんでした。決して体系づけて選んでいるのではなく、そのときそのとき思いついた建物を対象に書いているだけですが、不思議なことに最近では書きたい建物がつぎつぎに現れ、すでに写真を撮り終えて、私の写真専用の外付けハードディスクには執筆待機中の建物がいくつもある状態になっています。
 東京都内には明治以降に竣工した近代建築で、重要文化財に指定されているものが約28件あります。(一か所に同種の建物が指定されている場合は1件とカウントしました。)このうち『古今建物集』でまだ取り上げていないものが12件もあります。これらはすでに現地見聞済みでデジカメにもおさめてありますので、これらを今後、毎月1件ずつ書き続けても1年かかることになります。換言すれば、これから1年分の在庫を蓄積しているといえます。
 重要文化財に指定されている建物や登録文化財の建物はそれなりの美しさを秘めています。しかし、指定されていない建物でも見どころの多いものが 都内には数多く存在しています。ですから、連載を許していただけるならこの『古今建物集』は当分続けることができそうです。


製本したら4冊に

 ありがたいことに、明和会分会のホームペーを編集されている吉田基義さんと嶋根英昭さんに、『古今建物集』の総目次を作っていただきましたので、見たい項目・建物をクリックすればいつでも目指す建物を開くことができて大変便利です。
 毎日パソコンを活用していながら、画面をみるだけでは物足りず、私は印刷されたものが近くにないと落ち着きません。これは“シニアとしての資格”が備わってきた証なのでしょうか。私は以前に書いたものを参考として見返すことが必要ですから、自分で製本したものを手元に置いています。A4版で印刷すると大きく分厚くなるので、A5版(A4版の用紙に2ページ分を印刷)にして、10回分を1冊にまとめたところ、今年の8月までの40回まで4冊になりました。こんな製本が“自宅工房”で簡単にできるのもパソコンのおかげです。

「東京文化財ウィーク」を手に建物巡り

 毎年秋のイベントとして定着した東京文化財ウィークをここ数年楽しみにしています。通常は非公開の建物の内部などが見学できるので“建物ファン”にとっては絶好の機会だからです。ただ公開される日時が「文化の日」の前後に限定されますので、東京都教育委員会が毎年9月ごろ無料で配付する東京文化財ウィークの「公開・企画ガイド」を参考にして目指す建物を計画的に見学しないと見落としてしまいます。また、見学したい建物の公開日時が重なってどちらか選ばなければならないということもあります。その場合は、見学できなかった建物は1年後に再挑戦しなければなりません。この「公開・企画ガイド」の冊子は、都内の文化財に関し、エリア別に公開事業や文化財めぐり、特別展、講座・講演会、歴史的建造物の公開などの情報がギッシリと集約されていますのでハンドブックとして毎年便利に活用しています。

“晴歩雨打”で心身の健康維持

 毎年10〜11月に外出する際の必需品は、この「公開・企画ガイド」、「展覧会ガイド」(生活ガイド社)、デジカメ、携帯電話、都内地図です。この5点セットがあれば都内の美術館・博物館や建物を効率よく巡り歩き、デジカメに数多くの写真を収めることができます。
 携帯電話は、電話として使う以上に懐中時計と万歩計兼用として便利に使っています。万歩計は1カ月分が記録されますので歩数をチェックできます。文化財ウィークでの建物巡りをした11月の歩数記録をみたところ1日1万歩以上歩いた日が15日にも達していて自分も驚きました。
 歩くことは身体の健康に良いといわれますが、疲れが翌日に残ることも皆無で健康にありがたさを痛感しています。また、頭を使うことは老化防止になると信じ、撮り収めた写真を整理して、家のあちこちに散乱している関係資料を“たっぷり時間をかけて”探しまわりながら『古今建物集』を書き続けるのは、最良の頭の体操かもしれません。
 “晴耕雨読”ではなく、私の場合は“晴歩雨打”です。なにも予定がなく目覚めたときに快晴ならば、“5点セット”をバッグに入れて家を出てしまいます。どんより曇っていたり雨が降っていれば、迷うことなくパソコンに向かってキーボードを打ち続けます。
 新年もまた“晴歩雨打”で『古今建物集』の連載を続けるつもりです。引き続きお目通しいただければ幸いです。

  人は信念と共に若く 失望と共に老い朽ちる
             サムエル・ウルマン (邦訳:岡田義夫)
以上

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