平成20年4月10日
古今建物集 …美しい建物を訪ねて…番外編
   
春宵雑感
               
井出昭一

. 1.集めた図録・資料が貴重な材料
 昨年1月から毎月2回の予定で書き始めた『古今建物集…美しい建物を訪ねて…』は、途中いろいろな事情で数回欠けることもありましたが、先月で24回となりました。ここで対象とした建物は、建てられた時代、様式、規模の大小、所在地など無関係にその時思いつくままランダムに取り上げてきました。これまでを振り返ってみますと、特定の場所の建築群が13回、個人の邸宅が8回、近代建築が2回、茶室が1回となっています。
 このように継続できたのは、この機会をつくり励まし続けていただきました奥山貞夫さん、掲載にあたって毎回ご尽力いただいております吉田基義さんと嶋根英昭さんのご支援・ご指導の賜物と改めて感謝申しあげる次第です。
 私は高校まで信州で過ごし、その後東京に来てから現在までの40数年間、“趣味”として美術館・展覧会巡りを重ねてきました。美術館・博物館は有名建築家が力を入れて設計した建物が多いことから、展示されている美術品ばかりではなく次第に建物にも興味が向くようになりました。
 会社生活の中で、私は図らずも転勤を経験することなく定年を迎えました。転勤していたら当然捨てられていたような美術館・展覧会の案内チラシ、新聞・雑誌のスクラップなどがわが家に累積し、展覧会図録などは3000冊を超えていますので、建物について連載するための“材料”は十分確保されていると見込んでスタートしたわけです。“為になり、役立つ”という見地から、毎回、その時点で私が知っているお勧めの展覧会などを「トピックス」として紹介し情報提供をしてきました。

2.毎月2回を1回に改めて継続
 最近になって、私自身“課題”を抱えていることに気づきました。というのは、この明和会分会のホームページのほかにもエッセイも引き受けていたからです。
 こちらは「ダイヤネット」[注1]のメルマガにも『My Museum Walk“わたしの美術館散策”』[注2]を毎月1回連載しています。したがって、平均すると10日間ごとに原稿の締め切りが到来します。講演とは異なり文字として形が残りますので、何回かの推敲を重ねて完成したものをメールで原稿と写真を担当者に送ります。

 原稿を送った後、ゆっくりする間もなく、つぎの原稿に取り掛からなければならないのが現状で、10日ごとに課題のレポートを提出するような緊張が続いているわけです。そこで負担を軽くするために、『古今建物集…美しい建物を訪ねて…』は、これまでの月2回を1回にして、皆様からのご要望も取り込んで5月から改めて再スタートをしようと考えています。

[注1]「ダイヤネット」とは、三菱グループのOB約100名で構成され、パソコン相互勉強会<DiaPC>、古寺巡り<ご府内88ヵ所札所巡り>、歴史探訪会、シニアパソコン教室<ゆうゆう荻窪パソコンサロン>などパソコンを通じて幅広い活動を続けている親睦団体で私は世話役を務めています。


[注2]
『My Museum Walk“わたしの美術館散策”』を見るには、
http://dianet.sakura.ne.jp/museum/IDtop.html
を開いてください。2006年10月から毎月1回、私が今までに訪ねた美術館について設立経緯、環境、所蔵品など、写真を多数使って紹介しています。
3.エッセイの連載は健康の維持と生きがい
 私は外出する際に、その時点での草稿を印刷して携行し、電車の中とか待ち合わせに時間などを活用して、加筆訂正を数回繰り返すことにしています。最近では、電車の中で良いアイディアが浮ぶことが多くなってきました。
 掲載する写真も既存の写真で満足できないときには、撮り直しに出向くこともあります。その際に新たなことを発見したり、ついでに道草をすることもあって、帰宅後に歩数計を見ると1万歩から2万歩も歩くこともしばしばです。きれいな空気を吸って、美しい建物に触れて感動すれば心身ともに健康になり一石二鳥です。原稿の締め切りに余裕のあるときには、家人にも読んでもらうことにしています。そうすると、文章が長すぎるとか、読みにくいことばには振り仮名が必要だなどと、私が思いもしなかったことを指摘されることもありました。うっかりミスを未然に修正できたこともあり、これが家族の絆を深めることにもなっています。
 なんといってもうれしいのは「毎回楽しみにしています」とか「近くに住んでいながら知らなかったので、是非訪ねてみたい」とか「建物のすばらしさが改めて理解できた」など読まれた方からの言葉をかけられるときです。ときには私の気付かない情報を教えていただく機会もあります。また、わが家で滞積し死蔵されていた各種の資料が生き返ってきたことも事実です。いずれにせよ、結論としていえることは、エッセイの連載が私にとって、健康を維持し、生きがいにもなっているというのが偽らざる“本音”です。
4.好評な“明治生命館ガイド”
 私が最も美しいと思っている建物は「明治生命館」です。私の38年間の会社生活のうち丸の内の本館、新館、別館での生活が37年に及んだため愛着の深いのは当然です。平成9年に昭和の建物としては初めて重要文化財に指定され、ありがたいことに現在、土日に1階と2階が一般公開されています。
 私は定年を迎えると同時に、上野の東京国立博物館でボランティア活動を続け4年間の満了のあと小金井の江戸東京たてもの園と飛鳥山の渋沢史料館で、引き続いて“美しい建物”に囲まれる生活を送っています。

 この間に会社生活では得られなかった別の親しい皆様やグループの交遊が広がりました。その中で明治生命館のことを話した際に、見学をしたいという希望が多く寄せられましたので、ボランティア活動での経験を生かして、親しいグループの皆様を案内したところ大変好評でした。



 そこで「明治生命館ガイド・ボランティア」を立ち上げて、定例的に案内することを企画し、明和会分会事務局と会社の窓口の不動産部の担当者とも話をしました。しかし、私の時間的余裕がないことから、定例的にガイドをすることは断念し、折り合いがついた日時に個人的に実施してきました。昨年7月から今年の2月まで6回のガイドで70名の皆様が参加されました。会社側が用意されているきれいな案内書を配布して、見学経路に沿って案内し、見学後はマイプラザの地下のレストランで食事をしながら懇談をするというのが定番になっていて毎回盛り上がります。すでに予定されているものもあり、これからもボランティアとして適時、個人ベースで続けてゆきたいと考えています。
                          
以上

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