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6月下旬に京都の修学院離宮と仙洞御所を拝観した際に、同志社キャンパスにも足を踏み入れてみました。記憶が新鮮なうちに“近代建築日本一のキャンパス”の概略を紹介します。 |
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1.赤煉瓦建築の展示場 |
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前回取り上げました東京大学の本郷キャンパスは、後に東大総長となった内田祥三(うちだ・よしかず)が設計した“内田ゴシック”建築が林立する展示場でした。これに対し、同志社今出川キャンパスは、赤煉瓦建築の展示場です。 東大の建物は登録有形文化財ですが、同志社の建物は東大より一時代さかのぼる明治中期の堂々たる建物で、重要文化財指定の5棟が並んでいるのですから壮観です。東京では国立大学の東大、一橋大、東工大、私立大学では早大、慶大、立大、明治学院大、学習院大、日本女子大などのキャンパスの建物を訪ねましたが、重要文化財に指定されている建物は慶大の2棟(三田演説館、旧図書館)と明治学院の1棟(インブリー館)のみです。いかに同志社大の占める位置がすばらしいか歴然です。 ところが京都で建物を見学するといえば、平安神宮、桂離宮、金閣寺など神社仏閣が主体で、なぜか同志社大学の校舎はどの旅行ガイドブックにも掲載されていません。 |
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2.明治・大正・昭和の煉瓦建築が林立 |
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同志社は、明治8年(1875年)新島襄によって創立され、京都の中心・京都御所と相国寺の間に位置しています。正門は今出川通に面し京都御所の今出川御門の向かい側ですが、わたしは烏丸通の西門から入りました。左側に彰栄館、礼拝堂、ハリス理化学館と特色ある煉瓦建築がならび、いずれも重要文化財に指定されていると知って驚くばかりでした。 近代建築専門の米山勇先生に伺ったところ、「あそこは(同志社大学今出川キャンパス)、日本一ですよ。」といわれましたが、なんとも魅力的なところです。 明治中期以降に“ミッション建築家”によって建てられた煉瓦建築と大正・昭和に日本人建築家武田五一の設計した建物、さらに戦後増築されたものもがキャンパス内で調和を図りながら整然と配置されているように感じました。これは建学の精神が長期にわたって尊重されるというすばらしい伝統が形になって表されているのでしょうか。 |
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(注)建物別のデータは、門衛所でいただいた案内チラシなどを基に一覧表に整理しましたのでご参照ください。 |
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3.ミッション建築家の建物 |
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西門から入って最初に出会うのは彰栄館です。同志社で最初に建てられた煉瓦造の校舎で、京都市内で現存する最古の赤煉瓦建築ですが全く古さを感じさせません。中央正面の時計塔と鐘塔を兼ねた塔屋が映えています。東大の安田講堂、早稲田の大隈講堂のように毅然と切り立った時計塔と比べて柔らかさや温もりを感じる美しい建物です。 |
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彰栄館の隣に建てられた礼拝堂(チャペル)は、日本に現存する煉瓦造のプロテスタント・チャペルとしては最古の建物で、彰栄館とは異なり切妻の屋根と円形の窓、尖りアーチ窓が印象的です。週日の1時から40分間、メディテーション・アワーとして、オルガン演奏会が開かれているというので入ってみました。華やかさはなく落ち着いたステンドグラスの光のなかで、オルガンの調べを耳にして心身の疲れを癒すひと時を過ごすことができました。 彰栄館と礼拝堂を設計したのは、D.C.グリーンです。グリーンは、アメリカのマサチュセッツ州でアメリカン・ボード(米国外国伝道委員会)の一家に生まれ、明治2年、アメリカン・ボードの宣教師として神戸に来日し、明治15年から同志社に赴任して、教会・学校建築に携わったミッション建築家の1人です。 |
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礼拝堂の隣は、米国人J.N.ハリスの寄付によって建てられたハリス理化学館で、左右対称の安定感のある建物です。建物正面の車寄せの上部にある文字盤には「18 SCIENCE 89」と刻まれ、左角の基礎の石にも「明治二十二年 A.C.1889.」と定礎の年が刻まれています。木製の手摺を伝って階段を上がった2階には同志社に関する史料が展示されていました。設計は、英国王立建築家協会正会員となったA.N.ハンセルです。当時、日本で同協会の正会員は「日本建築界の父」ジョサイア・コンドル(1852−1920)とハンセルのただ2人のみだったそうです。 ハンセルのもうひとつの代表作は平安女学院明治館で、イギリス・ゴシック様式の煉瓦建てで威厳に満ちた階段を持つ優雅な建物だそうですが、今回は訪ねませんでした。 |
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重文建物の4番目のクラーク記念館は、「同志社の文化財建築物」のチラシの表紙にも使われている円形の尖塔を持つ印象的な建物です。修復中のため覆いが掛けられていて全く見ることができませんでした。2008年の修復後、平安女学院明治館と一緒に見学したいところです。 有終館は、正門から入った場合、左側の今出川通沿いの建物です。同志社の最初の図書館として使われ、当初は書籍館と呼ばれていましたが、大正11年(1917年)に新図書館(現:啓明館)に伴い有終館と命名されました。 設計は、彰栄館、礼拝堂と同じD.C.グリーンです。 |
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4.登録有形文化財も3棟 |
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同志社のキャンパスには、以上の5棟の重要文化財のほか、さらに3棟の登録有形文化財もあるため、明治から昭和初期にかけての煉瓦建築がキャンパス内に軒を連ねていて、全国でも珍しい“煉瓦建築博物館”だということが判りました。 3棟のうち最も古い建物は大正3年(1914年)竣工のジェームズ館で、外壁は赤煉瓦積みに白色の花崗岩を水平に配したシンプルなデザインです。設計は京都大学工学部建築科を創設し“関西建築界の父”とも呼ばれる武田五一です。 |
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武田五一は、栄光館も設計しています。栄光館は鉄筋コンクリート造の3階建てで、八角形の和風の塔屋をいただく目立つ建物です。鉄筋コンクリート造ですが、左横のジェームズ館との調和を図るため、外壁は煉瓦タイルを貼っています。 |
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3番目のアーモスト館は奥まったところに建っているため見落としてしまいました。これはヴォーリス建築事務所の設計による学生寮です。左右対称の外観、煙突、屋根窓、腰折れ屋根などの特徴を持った建物で、新島襄の母校である米国アーモスト大学の関係者による出資で建てられたそうです。 このほか、大学キャンパスから離れた寺町通には、明治11年(1878年)竣工の新島襄の私邸があります。これは和洋折衷造りとしては日本で最も初期のものといわれ、京都市の指定有形文化財になっています。 |
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今回、急に思い立って同志社キャンパスを訪ねましたが、すばらしい煉瓦建築にただ圧倒されるばかりでした。事前にもっと下調べをしてゆけばさらに理解を深めることができたと悔やんでいるところです。 |
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IDE・トピックス 2007.7.6 |
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美術館、博物館など開催場所のURLを表記しましたので、詳細はそれぞれのホームページをご覧ください。 |
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1.「金刀比羅宮 書院の美」…応挙・若冲・岸岱… 会 期:2007.7.7〜9.9 会 場:上野公園 東京藝術大学大学美術館 入場料:一般 1300円 休 館:月曜日 問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル) http://www.geidai.ac.jp/museum/ 香川県の金刀比羅宮の表書院に掲げられている円山応挙の障壁画は、応挙の頂点ともいえる作品群です。また奥書院にある伊藤若冲の「花丸図」は、四方の壁に四季の花々が描かれ百花繚乱です。今回は応挙、若冲、岸岱(がんたい)が両書院に描いた障壁画から、襖絵など約130面を移動して展示されています。金刀比羅宮の障壁画がこれほど大規模に境内外で公開されるのは初めてのことですから絶好の機会です。 |
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2.「中国・青磁のきらめき」 …水色から青・緑色の世界… 会 期:2007.6.16〜7.29 会 場:岡本 静嘉堂文庫美術館 入場料:一般 800円 休 館:月曜日 問合せ:03-3700-0007 http://www.seikado.or.jp/menu.htm 中国の龍泉窯をはじめ、耀州窯・南宋官窯・鈞窯・景徳鎮窯など青磁の館蔵名品を展示されています。岩崎小彌太の蒐集した「宋磁」の世界的名品である耀州窯「青磁刻花花喰鳥文枕」、南宋官窯「青磁香炉」、龍泉窯「青磁浮牡丹文太鼓胴水指」(重文)など、茶道具を含む青磁の優品が一堂に会します。 |
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3.「中国・朝鮮陶磁」 開館20周年記念 戸栗美術館名品展U 会 期:2007.7.1〜9.24 会 場:松涛 戸栗美術館 入場料:一般 1000円 休 館:月曜日 問合せ:03−3465-00702 http://www.toguri-museum.or.jp/home.html 開館20周年記念展の第2弾です。伊万里、有田など肥前磁器で戸栗美術館は知られていますが、もうひとつの柱である中国と朝鮮の東洋陶磁の名品が13年ぶりで展示されます。 4.「八重山古陶…その風趣と気概…」 会 期:2007.6.25〜7.14 会 場:西早稲田 會津八一記念博物館 入場料:無料 休 館:日曜日 問合せ:03−5286-3835 http://www.waseda.jp/aizu/index-j.html 八重山列島は沖縄本島さらに南に位置していて、石垣島、竹富島、西表島などから成っています。沖縄本島で生み出された独特の陶器は知られていましたが、発掘された陶片や伝世の完成品をなどの調査によって八重山にも沖縄本島の陶器を凌ぐ秀作生み出されていたことが判明ました。この展覧会は、八重山古陶の優品をまとめて紹介する最初の展覧会です。會津八一記念博物館は、大隈講堂から大隈重信の銅像に向かって行き、左側にある2号館です。今井兼次の設計により1925年に建てられた旧図書館で、キャンパス内では最も古く優美な建物だといわれています。近くに坪内博士記念演劇博物館もあり、お勧めのスポットです。いずれも入館料は無料です。 |
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(了) |