MyMuseum東京国立博物館「柳緑花紅」(改訂版)
平成18年7月5日
夏日休話 2題
…こだわりのビール・こだわらないお茶…
井 出 昭 一
梅雨の最中、蒸し暑い日が続きます。今回は“東京国立博物館シリーズ”を離れ、暑さを忘れるため、涼しい話題を二つお届けします。
[その1]こだわりのビール……おいしいビールの飲み方……
 夏になると、私は生まれ育った信州が懐かしくなります。夏はまたビールのおいしい季節でもあります。ビールは爽やかな信州で飲むより、蒸し暑い東京で飲む方がおいしいような気がします。
 汗が噴き出るような真夏の午後、家に帰るや、まず冷蔵庫に入れてあるビールを冷凍庫に移します。ビールは瓶よりも缶の方が早く冷えて扱い易いので便利です。同時に、ビールを飲むグラスも冷凍庫に入れることを忘れてはなりません。グラスは大振りの薄手のワイングラスが良いでしょう。そこでシャワーを浴び、頭から冷たい水を被り、汗を洗い流します。糊のきいた浴衣が最高ですが、着易いスポーツシャツでもOKです。
 早速、ビールといきたいところですが、もうひとつすることがあります。それは歯を磨き、口を漱ぐことです。歯磨きペーストをつけると香りが残るので、歯ブラシだけで歯を磨くのです。歯を磨いたら、真水で口を漱ぎます。さらに、歯ブラシで丁寧に舌を磨きます。舌は結構汚れているので、この舌を磨くことは大切なポイントなのです。次に、口を漱いでうがいをします。喉は渇いていても、決してここで水は飲まないことです。これで心身ともに爽快な気分になります。
 そこで初めて冷凍庫から、多少冷え過ぎのビールとグラスを取り出します。冷えたグラスは一瞬にして曇り、傾けたグラスにゆっくりビールを注ぎます。冷えた薄手のワイングラスの口当たりも程よく、乾いた喉にビールを流し込むとき、このときこそ暑さを忘れ至福のときでもあります。
・・・「無言」・・・何も言うことはありません。
[その2]こだわらないお茶(抹茶)……気楽なお茶の飲み方……
 一転して今度は熱い話題です。
 抹茶を飲むというと、どうしても茶室で緊張して飲むことを想定し、敬遠されてしまいます。しかし、抹茶も家庭で気楽に飲むことをお勧めします。
 道具は、茶碗と茶筌のみです。茶杓はあれば良いですが無くても大丈夫です。用意する材料は、抹茶と菓子のみ。ポットにお湯を蓄えて、いつでもお湯が使える状態にしておきます。ポットで沸かす水は、必ず浄水器を通した水を使うと良いでしょう。
 手順としては、まず茶碗にポットのお湯を入れます。柄杓を使わなくともポットで充分です。これは、茶碗を温めることと茶筌の湯通しをして穂先を柔らかくするためでもあります。
 次に、冷凍庫(冷蔵庫ではありません)に保存しておいた抹茶を適量入れます。抹茶は、買ったらすぐに「ふるい」でこして保存するほうがよいでしょう。手間を省こうとして、抹茶を缶から直接茶碗に入れようとすると、お茶がどっさり入ったりして、お茶の分量の調節が難しいのです。やはり竹の茶杓を使うのがベストです。茶杓がなければスプーンでも良いのですが、金属のスプーンではどうしてもお茶がスプーンに付着してしまいます。
 適量の抹茶を入れたらお茶を点てます。机の上は滑りやすいので台拭きを敷いて点てると茶碗が滑らずお茶が点てられます。茶筌を振って泡が細かく均一になったところで茶碗の中心から茶筌を真っ直ぐうえに抜くと中心がふっくらと盛り上がって見た目もきれいです。
 私の場合は抹茶を買ってきて、冷凍庫に保存しておきます。茶碗は知人の陶芸家が作った志野茶碗を愛用していますが、これはお茶を点てやすく、口当たりも良く飲みやすいからです。茶杓は、先端の櫂先を大きくして、長さは短めに自分で削った特別製のものです。菓子は干菓子。好物は「和三宝」、甘みがさわやかで、口に含むとさわやかな甘みが広がる、その甘みが残っているうちにお茶を飲むのです。抹茶の量、お湯の量は自分の好みで、その時々に応じて増減自在です。のどが乾いていれば、お湯を増やしたり、お替りをして飲みます。自分だけでなく、家人にも尋ねて、飲みたい人には抹茶、お湯の量を好みに応じ特別仕立で点てることにしています。お茶を点てれば、家族との会話もでき家庭サービスにもなります。
 茶の湯とは たヾ湯を沸かし 茶をたてて のむばかりなる 事と知るべし
 この利休の歌のとおりです。
 再び転じて冷たい話題です。
 真夏に熱いお茶は?……という方にお奨めは“抹茶の冷水点て”。これは江戸千家家元の川上宗雪宗匠から“直伝”のものです。 手順は、冷えたグラスにまず氷を数個入れます。氷はロックアイスがあればベターです。次に冷凍庫に保存してあった抹茶をスプーン1杯程度いれます。そこに冷えたミネラルウォーターを注いで、マドラーでかき混ぜる。これが“秘伝”のすべてです。グラスを通して萌黄の色はすがすがしく、抹茶の香も爽やかで、すっきりした喉越し、これはまさに真夏の最良の一服です。
 最近、スーパーマーケットで粉末の緑茶(“抹茶”ではない)を発見し、買ってきて抹茶の替わりに試してみました。抹茶よりは冷水に溶けやすく、茶殻もないので後始末も不要です。抹茶には抹茶の良さがあり、粉末の緑茶にはまた別の良さがあります。
 シニアとなって、朝の目覚めが早くなりました。起きると洗顔、歯磨き、舌磨き、うがいを終えて朝の“一服”ではなく“一杯”のお茶。
 そこで、パソコンに向います。
 「つれづれなるままに 日暮しパソコンに向ひて 画面に映り行く デジカメ写真の数々を スライドショーで眺め 乏しい知恵を絞りに絞ってエッセイを書き続けることこそ シニアライフの楽しみなれ。」
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 次回から、再び“東京国立博物館シリーズ”に戻ります。
 IDE・トピックス No.12 ( 2006.07.05) 
  今回は、展覧会・イベントではなく、この6月に探訪した建物のいくつか紹介します。
*( )内は探訪した月/日 
1.神戸市立 相楽園(6/4)
  [神戸市中央区中山手通5-3-1 電話 078−351−5155]
 親戚の結婚式で久し振りで神戸に行き、その機会を活用して、市内の建物を探訪しました。
 初めて訪れた相楽園内には、旧小寺家厩舎、旧ハッサム住宅、船屋形と重要文化財指定の建物が3棟もあり、開園直後の園内をひとりで独占して楽しんできました。


2.法務省赤れんが棟(6/10)
  [東京都千代田区霞ヶ関1−1−1  *平常は、月〜金曜日公開、入場無料]
 法務省がメッセージギャラリー開設1周年記念として、6月10日の土曜日に特別開館するというので行きました。明治政府が招聘したドイツの建築家エンデとベックマンが設計し1895年完成したドイツ・ネオバロック様式の建物で、1996年復元され、重要文化財に指定されています。“明治”が残されている都心の一角です。















3.東京ジャーミイ・トルコ文化センター(6/23)
  [東京都渋谷区大山町1−19   電話 03−5790−0760]
 知人から教えられて訪ねました。小田急線代々木上原駅のすぐ近くで、建物の外装内装ともデザインと色合いがイスラム風で、突然、別世界に入ったような雰囲気になります。ジャーミイとは、イスラム教の礼拝場をさす言葉だそうです。写真撮影は、1日5回の礼拝時を除いて自由です。

4.聖徳記念絵画館(6/23)
  [新宿区霞ヶ丘町1−1   電話 03−3401−5179]
 明治神宮外苑のシンボル的建物で、何十年振りで中に入ってみました。外壁は花崗岩で、内壁には大理石をふんだんに使った重厚そのものの建物です。公募された156点の中で1等となった小林正紹(まさつぐ)の原図をもとに、明治神宮造営局が修正設計し、大正15年(1926年)10月竣工しました。
5.旧古河庭園洋館(6/24)
  [東京都北区西ヶ原1−27−39   電話 03−3910−0394]
 旧岩崎邸、開東閣、三井倶楽部などを手がけたジョサイア・コンドルが設計したものです。英国貴族の邸宅にならった古典様式で、天然スレート葺きのレンガ造りです。洋風庭園には大輪のバラが植えられ春秋楽しめます。広い日本庭園は、数多くの名園を手がけた小川治兵衛の作です。
以 上