MyMuseum東京国立博物館「柳緑花紅」(改訂版)
  平成18年5月21日
東京国立博物館でのボランティア活動(2)
…自主企画活動「陶磁室エリアガイド」…
 井 出 昭 一 
ボランティア自主企画活動花盛り
東京国立博物館(愛称:東博)の生涯学習ボランティアの自主企画としてのいろいろな活動が盛んになっています。
東博では、「列品解説」(原則として毎週火曜日の午後)と称して、研究員による陳列品1点に焦点を絞って専門的な解説が行われてきています。これに対して、ボランティアによるガイドは、東博の初心者あるいは一般の来館者向けに平易に紹介することを狙いとしています。私はボランティアとして、お客様と展示品との仲立ちをして、展示品を理解していただくためのヒントを提供できればよいのではないかと思っています。
展示品を解説するものとしては、「浮世絵版画展示ガイド」、「陶磁室エリアガイド」、「考古展示室ガイド」、「法隆寺宝物館ガイド」などの分野別のものと、国宝室を中心に本館の主な作品を紹介する「本館ハイライトツァー」があります。
また、展示品以外を対象とする自主企画としては、庭園内の樹木を解説する「樹木ツアー」、本館北側に点在する由緒ある茶室を案内する「庭園茶室ツアー」、主として応挙館での「お茶会グループ」もあります。このうち、私が参加していたのは、陶磁室エリアガイド、法隆寺宝物館ガイド、庭園茶室ツアー、お茶会グループの4グループでした。いずれも東博でなければできないユニークなものばかりで、運営・方法は各グループによってさまざまです。私が在籍していた当時と現在では異なるかと思いますがいくつかを紹介します。
陶磁室エリアガイド…日本陶磁をやさしく紹介
「陶磁室エリアガイド」の場合は、毎週土曜日に実施していました。午後2時30分に本館1階のエントランス・ホールに集合し、1階の陶磁展示室で、展示のテーマ「江戸と桃山の陶磁」について、当日のガイド担当者が、参加者に紹介したうえで、担当者が選んだ特定の作品を数点、あるいは展示されている特定のケースを30分程度わかりやすく解説するものです。
このガイドが他と異なる点は、当日のガイド担当者のほかに数名のサポーターが、ガイド終了後も30分間ほど展示室内に待機していて、参加者から個別に質問を受けたり、陶磁に関する対話をすることになっている点です。
この方式は、初めての来館者にとっては、東博の歴史、展示館、収蔵品等の概要を知ることができ、さらに陶磁の展示室がどのような考えのもとに陳列されているかも理解できます。そして、疑問点や不明な点はサポーターに個人的にゆっくりと尋ねることができるので、こうした対話方式はお客様にとっても好評のようでした。
このやりかたは、ボランティア側にとってもメリットがありました。というのは、ボランティアは専門の研究員ではないので、すべての展示品の詳細についてまで熟知しているわけではありません。もしガイドが思い違いあるいは無意識のうちに誤ったことを話したような場合、サポーターがチェックしていてその場で訂正することにしました。また、お客様からの質問に答えられないような場合、「私はお答えできませんが、その点については、あちらのサポーターが詳しいので、ご紹介しますからどうぞ」というように、ガイド担当者、サポーターがお互いに補完できることです。
 陶磁の好きなボランティアだといっても、いきなりガイドはできません。そこでまず基本となる勉強をしようということになり、東博の陶磁室長(当時)に特別に講師をお願いし、日本陶磁の通史を受講することができました。
次いで、教科書として推奨していただいた「日本やきもの史」(美術出版社)を、時代別、各章毎に担当者を決めて、輪読・発表の自主勉強会を毎月2回の割合で5カ月続けました。輪読といっても単に教科書を読むのではなく、発表の担当者は、関係した参考図書、資料等を事前に調べ、取りまとめ工夫した資料を配布しましたので、かなり詳しい資料が蓄積するほどになりました。
東博の陶磁の魅力
 陶磁について東博のすばらしい点は、日本と東洋(主として中国陶磁と朝鮮陶磁)あらゆる時代の代表的な作品が網羅されているといっても過言ではありません。例えば本館1階の第13室の陶磁展示室では「江戸と安土桃山の陶磁」、第19室の「近代工芸」では明治以降の人間国宝クラスの名品、本館2階の第4室「茶の美術」では茶道具、平成館の考古展示室では発掘されたもの、東洋館では中国陶磁と朝鮮陶磁の優品などを見ることが可能です。
東博の陶磁の収蔵品は、日本陶磁、東洋陶磁を合わせるとおおよそ6千件にのぼり、日本の陶磁は3ヵ月毎に展示替えをしますので見飽きることはありません。
活用したい東博のホームページと「東京国立博物館ニュース」
東博を訪れる前に是非ご覧いただきたいのは、内容が格段に充実している 東博のホームページ です。
その日に展示されている作品が展示館別、展示室別に見ることができます。さらに「催し物」をクリックし、「ボランティアによる解説・イベント」を見ますと詳しいスケジュールも確認できます。

パソコンやインターネットが苦手の方は、本館と平成館のインフォメーション・カウンターにある「東京国立博物館ニュース」(隔月刊行・無料配布)をお奨めします。これは東博のいろいろな情報が盛り沢山でしかもカラフルです。その最終ページには、2カ月間の東博の展示・イベントに関する予定がまとめられ、「ボランティアによる解説・イベント」も一覧できます。このように東博もボランティアによる各種のガイド・催しの広報に力を入れているだけに、ボランティアの責任も重くなってきているといえます。
 IDE・トピックス No.9 ( 2006.05.21) 
1.特集陳列「東洋の名品 唐物」
   2006.5.9〜6.4   上野 東京国立博物館 本館2階特別1室
   問合せ03−3822−1111(代表)
本館2階の「国宝室」で、東山御物の梁楷の「雪景山水図」の三幅対が展示されるのに合わせて、唐物の国宝、重要文化財の名品が展示されています。特別展ではありませんが、見ごたえあるものが1室にまとまっていて、ゆっくり堪能できます。
東博のシンボルとなっている大樹ユリノキの花が開いています。チューリップに似た黄緑色の花で甘い香りが漂っています。こちらもお見逃しなくご覧下さい。
2.「ナポレオンとヴェルサイユ展」(皇帝戴冠200年記念)
   2006.4.8〜6.18   両国 東京都江戸東京博物館   観覧料金 一般1300円
   問合せ03−3626−9974
ヴェルサイユ宮殿美術館所蔵のナポレオン関係の絵画、家具、調度など絢爛豪華なコレクションが日本初公開作品も含め150点展示されています。
以上