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病臥雑感(6)
「わが臨時のPCコーナー」…“病臥雑感”の発信基地…
                   
“病室の一患人” 南山翠春
(井出昭一)
 昨年11月19日に膵臓ガンの治療のため入院してから2カ月弱も過ぎました。これ程の長期入院は私にとって初めての経験です。
 病室内に閉じ籠っていれば退屈極まりないところですが、 “病室の一患人” には“退屈”という言葉はありません。理由は簡単です。シニア向けのさまざまのオモチャと随時楽しく戯れているからです。
 ”病臥雑感“の読者から寄せられる感想が楽しみでメールを見るために毎朝早く起きてしまうほどです。また励ましのメールも多数いただき、ひとりひとりにお礼のメールを差し上げられず申し訳ありません。この場を借りてお礼申し上げます。
 何名かの方からの問い合わせもありましたので、入院に際して私が病室に持ち込んだオモチャを列挙してみます。
 わが臨時のPCコーナーの装備品は下記のとおりで、“病臥雑感”の発信基地の写真を添付します。

1.ミニパソコン[Lenovo S10e](WindowsXP搭載)
 病室のLANケーブルでインターネット、Gメールが可能ですが、有料で一日24時間、使用時間の長短にかかわらず300円かかります。そのため、インターネットとメールは、無料のiPadを使うことにしていて、外付けHDからファイル、写真の呼び出し、照会などに使っています。エッセイ、文章の作成には便利で、この”病臥雑感“のとりまとめ、発信はこのミニパソコンがあってこそ可能です。
 このパソコンを私に譲っていただいた岡谷に住む“パソコンの達人”は、昨年病魔に襲われ入院されて、一時はメール不通となり、“病室の一患人”も心配していました。いただいた年賀状にアドレスが記載されていましたので、メールを送ったところ、早速、氷結した諏訪湖の素晴らしい写真を送り返していただきました。寒中に写真を撮り歩けるまで回復されたことは本当に喜ばしかぎりです。
 「みずうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ」頃は、ともかく、
「高槻のこずゑにありて頬白のさへづる春となりにけるかも」のような暖かい春になったら、“病室の一患人”も再び“和楽備の一忙人”となって、“パソコンの達人”とともに島木赤彦の歌の古里を訪ねたいものです。
2.タブレット[iPad(第3世代)]…Wi・Fi+セルラーモデル/64GB
 メール(Gメール、iCloudメール)、Safari(インターネット)、カレンダー(毎日の治療メモ、時間別)、メモ、カメラとして、広く活用しているのがiPadです。Gメール、カレンダー(予定表)は自宅のデスクトップPCと同期しているので大変便利です。入院が長くなるので当面、カレンダー(予定表)は必要ありません。そこで、カレンダーを利用して、その日の治療や出来事などを時間別に入力しています。
 入院してから再認識したのはYouTubeです。YouTubeを開いて、BachとかMozartで検索して好みの名曲を即座に聴くことができます。音質も素晴らしいですが、きれいな画像を楽しめるものもあります。Mozartについては、ケッヘル番号をK191(ファゴット協奏曲)、K299(フルートとハープのための協奏曲)、K622(クラリネット協奏曲)入力するだけで検索できます。演奏家の名前を入力して演奏比較も容易に可能です。これをCDでやろうとすると、かなりの時間と費用をかけなければなりません。また、テープでいう早送り、巻き戻しも手軽にできます。とにかく、YouTubeは、音楽ファンにとっては文句なしの優れものです。
 コードなし、マウスなし、薄い、早い、鮮明、高音質と欠点のない“入院生活の必需品”です。入院してからでは手遅れです。未購入の方は一刻も早く入手して、私のような突然の入院に備えてください。Apple社やSoftBankから宣伝費をいただいているわけではありませんが、入院して使ってみた偽らざる実感です。
したがって“iPad不要論者”だった私を、一夜にして“iPad信奉者”に改宗させた二人の師匠にただ感謝、感謝のひとことです。


3.スマートフォン[イーモバイルhtc]
家族(家内と娘)とのホットラインとして、病状の報告や依頼事項を毎朝メールを送っています。定例化してしまったため、うっかり忘れると「今朝は体調が悪いのですか?」などと督促される始末です。
4.デジカメ[カシオEX−H20G]
 治療予定のない土日など、体調の良い時には主治医から気分転換のため外出を推奨されていますので、付近散策の良き伴侶です。病院周辺は撮影対象が多いので結構楽しんでいます。“病に冒されてもデジカメは手放さない”を実行中です。“用心棒”として家内も同行しますので、入院後、自宅との往復で何かと負担を掛けている恩返しに懇切丁寧にガイドを務めました。(以上は、過去のことです。)
 ところが、最近“用心棒”が替わりました。新しい用心棒は点滴の架台です。放射線治療の経過とともに、副作用とみられる食欲減退で、栄養剤の点滴をすることになりました。これが毎日、日中10時間かかりますので、楽しみだった気分転換の外出ができなくなってしまいました。
 しかし、“窮すれば通ず”です。点滴の架台を従者にして、院内の撮影スポットで同病仲間と一緒に撮り続けています。その成果は、追って“病臥雑感”に登場させたいと思っています。
5.電子辞書[カシオEX−word]
 文章、エッセイを書く際に読みや漢字の確認のため「広辞苑」を使っています。掌に入るサイズのため、手頃で便利です。歳とともに利用する回数が増えています。
6.外付けHD[サムスン HD502HI](500GB)
 この2年間に撮影したデジカメ写真の保存用倉庫です。空きスペースはわずかですので、かなりの写真が蓄積されています。年別、月別、日別に保存していますので、私の書くエッセイの写真の源です。じつは、この外付けHDは3号機で、1号機と2号機(いずれも250GB)は自宅待機中です。
7.ソニーのウオークマン:Wシリーズ[NWD−W200] 2GB
これも岡谷に住む“パソコンの達人”の推奨により、数年前に購入したものです。私のお気に入りのバッハのマタイ受難曲、カンタータ、無伴奏チェロ組曲、インベンションとモーツアルトの管楽器の協奏曲全曲、ピアノソナタ、声学曲など名曲、長短数十曲をCDから転送してあったものを、自宅からそのまま持ち込みました。
 コードレスで、パソコンに向かっているときも、ベッドに横たわっているときも邪魔にならず便利で、音漏れもしないので真夜中にも聴いています。3分充電で9分再生、90分フル充電で、12時間も再生できます。
8.USBメモリー
 機器というほどではありませんが、容量さまざまの8個のUSBメモリーを持ってきました。雑然と保存していたので、内容別にまとめたり、重複したものを削除したりして、3個を空にしました。
 以上のように、自宅のPCコーナーがそのまま移動したとほぼ同様な状態で不便を感じません。今回の入院を意識したわけではありませんが、全てコンパクトサイズで狭い病室にぴったりと収まっています。5個あるコンセントも全て有効に活用させていただいています。
 病室にはテレビが置かれ、売店に行けば新聞もありますが、あえてテレビも新聞も避けてきました。“竹林の七賢人”に習って“和楽備の一閑人”は、今や“病室の一患人”と変身して、まず膵臓ガンの治療を最優先し、次に頭を固くしないようにパソコンに向かい、体を柔軟にするようベッドの上で真向法体操に励むという仙人のような生活を送っているところです。
(2013.1.16)

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