高島克規のインド日記
7月1日(水) 雨が来た!
    2008年      6月7日
    2007年      6月18日
    2006年      5月31日
    2005年      6月19日
    2004年      6月10日
    2003年      6月16日
    2002年      6月12日
    2001年      6月9日
    2000年      6月6日 
    1999年      6月13日

  この表が何かおわかりでしょうか?サッパリ、という人が大半だと思います。過去10年間にムンバイ地域で雨(モンスーン)<注1>が降り始めた日が表示されています。過去では2005年の6月19日が一番遅かったわけです。ところが今年は6月19日になっても雨は降らなかったのです。
  ムンバイでは6月から9月にかけて雨が降り、10月から翌年の5月まで8ヶ月間全く雨が降らない<注2>。とにかく不思議としか言いようがない。ムンバイに赴任してから一度も雨に遭遇したことがないのだ。

  ムンバイの気候を要約すると、2~5月「暑季(夏)」は日中は最高気温が40度近くまで上がる。一年で一番暑い時期で、雨はほとんど降らない。6~9月「モンスーン《雨季》」ほぼ毎日、雨が降る。湿度が高くなりジメジメするが、気温が下がり暑季に比べ過ごしやすい。10~1月「乾季(冬)」一年中で一番過ごしやすい時期と言われている。ちょうど日本の秋のような感じ。朝夕は長袖がほしいときもある。
  そして以下は現在、今後の雨量を予測した表である。今年がいかに深刻であるかおわかりいただけると思う。
実際の降雨量(ミリ)
   6月24日まで
     不足(%) 予測(平年に対する
       予測 %)
インド全体 50ミリ ―53% 93%
西北インド 21ミリ ―46% 81%
中央インド 24ミリ -75% 99%
東北インド 121ミリ -56% 92%
南部インド 83ミリ -25% 92%

<水不足の影響を伝える新聞記事>

各々の写真をクリックすれば拡大版でお読みいただけます。

  この影響がどのようなものであったか、まとめてみた。
 家畜農業(ビダルバ)
 ・飼料が買えないので牛を売っているケースが多くみられる
 ・一頭3000~8000ルピー(約6000円から16000円)が相場
 ・自殺する農家オーナーも現れた 
 給水制限(ムンバイ)  ・6月9日から10%の給水制限を実施
 ・6月20日から20%の給水制限を実施
 <ムンバイの人口変化>
  2001年:1197万人
  2008年:1324万人
  2011年:1379万人(予測)
 農家(全国)  ・田植えが出来ない(平年は6月初旬に開始)
 ・肥料が高騰
 ・収穫が大幅に減産の見込み
 <マハラシュトラ州>
   穀物は25%収穫減の予測
   2008年1540万トン
   2009年1170万トン(予測)
    →結果として物価の高騰に繋がる懸念
 行楽地(避雨地)  ・旅行予約のキャンセルが続出
 <例:マハラシュトラ州観光開発公社の発表>
 ・1000件以上の予約がキャンセルされた
 ・行楽地は設備投資をしたが行楽客は来ない

  個人的にも雨が降らないために夜になっても気温が下がらず、夜中に汗をかき、何回も下着を替え、寝不足になっていた。そして待望の雨がやってきた。6月20日である。昨日、記録を更新したばかりである。もう少し早く降って欲しかった。

  モンスーンというのは日本の雨期とは全く違う。英語の表現であれば「It rains cats and dogs=どしゃぶり」である。「シトシト」という表現は全く当てはまらない。そして「雷、ゴロゴロ」なのである。さらに大きく違うのは「降っている時間が比較的短く、断続的に一日中続く」ということであろうか。合間には青空も、太陽も出る、という具合で、一日の中にいろいろの天気を楽しめる?
  一昨年は大変な雨だったそうで、電車も止まり、三日間会社も休みになったそうである。インドのインフラはまだまだである。一流国になるためにはインフラの整備がかかせないであろう。
しかし、問題はこの雨が貯水池に降っているか、どうかである。ヒテーシュさんが貯水池(ポワイ湖)に連れて行ってくれた。ムンバイには五つの貯水池があるようだ。その内の三つが市内にあるのだ。連れて行ってもらった貯水池はIITの隣にある。
  本当に水が少なく、地表が現れている。危険水域なのである。

  インドの人は雨が降っても、傘などさしている人は少ない。雨を楽しんでいるようにも見える。大多数のインド人にいんうつなムードはない。雨を神の恵みと考える風習が根付いている。雨でずぶ濡れになって海岸にたたずんでいても、それは暗いような、悲しいようなイメージでは決してない。モンスーンの影響で波が高くなった海へ服を着たまま飛び込んだり、水をかぶったりと大騒ぎ。雨の中をずぶ濡れになって楽しく寄り添って歩く若いカップルの姿も目に付く。
雨に喜ぶ子供たち

  でも、これだけ雨を待っていたのだからその気持ちは痛いほどわかる。草木もみな緑に変わった。雨上がりのあとの空気がとてもスガスガしい。私も先日、訪ねてくれた友人が置いていってくれた傘は使ってはいない。この雨がインド全土に幸運をもたらすことを祈らざるをえない。
目次に戻る