高島靖男のインド日記
3月1日(日) ハジアリ霊廟
 今日、ご紹介するハジアリ(Haji Ali)霊廟<注>は今回、家内が来てムンバイを見学することになるまで全く知らなかった。日本で発売されている「地球の歩き方 インド」などにも掲載されていない。だが、ムンバイに来て一番印象に残った場所かもしれない。インド門、タージ・マハール・ホテル、エレファンタ島、チャーチゲート駅、カンヘーリー石窟など見どころは沢山ある。しかし、個人的にはこのハジアリ霊廟が一番心に残った。
イスラム教の霊廟なのでテンプルではなくモスクと言う。
 
ハジアリ霊廟(モスク)
 
  この霊廟はチャーチゲート駅(ムンバイ市内の始発駅)から5つ目のマハラクシミ(Mahalaxmi)駅の近くにあり、ムンバイ市内から1駅先の位置にある。今回は車で行ったので駅周辺の様子は紹介できないのが残念である。
<注>
  ハジアリ霊廟とは、19世紀初めにムンバイ出身の富豪ハジアリによって作られた(この場所で溺死してしまったと言われているが、メッカ巡礼の際に死に、その棺の流れ着いた場所とも言われている)。
イスラム教のモスクと霊廟で、海岸から霊廟からまでは細い道でつながっている。
この参道は海抜0メートルのところにあるので干潮の時しか島へは渡ることができない。

ハジアリ霊廟<参道>

 市内見学の際、アニタさん(社長の奥さん)がいくつか夕日が綺麗な海岸を紹介してくれた。運転手さんはヒンディー語しかわからないので、案内されてもどこに行ったのかチンプンカンプンである。沢山写真を撮ったので、運転手さんに「ハジアリ霊廟」を見せて、「もう一度行きたい」と英語で何回も行った。なんとなくわかったようであるが不安なのでアニタさんに電話で場所の様子を伝えると、「ハジアリ霊廟」ということがわかった。翌日もう一度行くことになった。
 夕日が沈む時間に見ると(写真ご参照)、海に沈んでいる、あるいは浮いているように見える寺院である。家内も私も見とれてしまってしばらく動くことができなかった。視線の左には太陽…そして右には…月。太陽と月を同時に眺めながら、地球に立っている不思議さを覚えた。
  翌日、再度、出かけた。「ハジアリ霊廟」の近くには全く駐車場がない、ない、ない。探し回ったあげく市内に入り駐車場に車を止めて、タクシーで出かけることになった。運転手さんがタクシーに乗るはめになってしまったのだ。

参道(本土側)から夕日を望む

   やっと「ハジアリ霊廟」の近くでタクシーを降りた。目の前に「Subway」と表示がある。家内曰く「ムンバイにも地下鉄があるの?」。「グッド・クエスチョン」である、が、ムンバイの「Subway」は地下鉄のことではない。「Underpath(地下通路)」のことである。ムンバイでは建設費がかかるので道路を横断するのに高架橋を作っているケースは少なく、大概は「Underpath」なのである。そしてそこはスラムの人たちのネグラでもある。私は時々興味もあり、歩くことがあるが気持ちの悪い場所である。とても家内をつれて行く気持ちにはならなかった。
 「ハジアリ霊廟」への入口がこれ又わかりずらい。日本人の我々だけだったら見つけられなかったと思う。何せ表示が全くないのだ。行商の店の間をすり抜けて行く、こんな表現がピッタリだ。家内が言っていたが「後の白人の人たち私たちの後から付いて来たわよ。入口が探せなかったみたい」。まさにそのとおりあったのであろう。
  やっと「ハジアリ霊廟」につながる参道に出た。周りには日本と同じように観光客目当ての店がたくさん出ている。かなり長い参道である。朝のこの時間は潮が引いているので参道が現れたのである。行く途中の道は、悲惨・・・。ズラーと並んだ物乞いの数、その人たちは手のない人、足のない人・・、と今までに見たことのない光景。子供も混じっている(写真ご参照)。沢山の写真は撮れなかった。むやみに写真を撮っていると金を出せ、みたいなスラム、貧困の人たちがいてあぶない、ということに最近、気が付きだしたのである。
 季節は冬であるが歩いている時間の気温は30度を超えている。炎天下、このズラーと並んだ物乞いの人たちは水も持たず大丈夫なのであろうか。
  「ハジアリ霊廟」に到着した。あまり大きな「霊廟」ではない。イスラムのモスクに入るのは初めてでちょっと緊張した。入口は男女別なのである。というより女性は蔑視されている、と言った方が正しいかもしれない。 「霊廟」内部では写真は厳禁のようなので写真がないのが残念である。入口では靴を脱いで裸足で中に入ることになる。運転手さんはヒンズー教徒である。彼も一緒に入って、御賽銭を払ってお祈りしている。私も10ルピーほど賽銭箱に入れて祈った。ヒンズー教徒もインスラム教徒も一緒に祈っているが、これはいいのだろうか?アニタさんに後で聞いてみたが、何の問題もないそうだ。よくわからない??

ハジアリ霊廟参道に並ぶ物乞い

 出口で靴を履こうとすると、靴の番をしていた少年が金をよこせ、と言う。運転手さんは「ノー」と言って手を振ったが、二人分の2ルピーをその少年にあげた。するとその少年は仲間の少年たちに「御金をもらったぞ」というようなことを自慢しているらしい。払わなくてもよかったのか?家内にも聞いてみた。「靴を履くときお金を取られた?」「いいえ」である。ダメもとでもやってみる、それがインド式なのかもしれない。
 
 「霊廟」の外は岩場の海岸である。沢山の人が出ているので行ってみた。アラビア海の潮の香りがする。
 ヘドロの匂いはしない。岩場と言っても日本のような岩場でなく黒い溶岩の塊のような感じである(写真ご参照)。アラビア海の水に触ってみた。温たかい。
 アラビア海は暖流なのだ。海に入って泳いでいる人もいる。
海水浴場という雰囲気ではないが、聖地の海で身を清めているのかもしれない。ムンバイ市内の高層ビル、そして目の前の貧困な人々。
祈ることしか出来ない人々。言葉には言い表せない感情が渦巻く。

岩場の海岸風景

 この「ハジアリ霊廟」はムンバイ空港へ離発着する飛行機からも見えるらしい。是非、一度空の上から見てみたい。ムンバイへ来られる方には、是非、インド門、タージ・マハール・ホテル、エレファンタ島、チャーチゲート駅、カンヘーリー石窟もいいが、この場所で日没を見ていただきたい。

宇宙、自然、人間の不思議を感じざるを得ない。
 

<地図>

<鉄道路線図>
海に飛び出しているところが「ハジアリ霊廟」

(写真をクリックすると拡大します)

ハジアリ霊廟は一番左のラインのMahalaxmi(マハラクシミリ)

駅の近く  (写真をクリックすると拡大します)

目次に戻る